たちあっぷ誕生秘話
- 安部 整
私たちE-LIFEの福祉用具専門相談員は、ご利用者様にとって最適な住環境を提供する仕事という考えを最も重視しています
単に福祉用具をお届けするのではなく、ご利用者様の問題を解決することです
今回は福祉用具の大ヒットシリーズ「たちあっぷ」についてです
目次
1.たちあっぷ
「たちあっぷ」は起き上がりや立ち上がり、移動などの支援をする福祉用具(手すり)です
使いたい場所に置くだけですぐに使える便利な福祉用具です
「たちあっぷ」というネーミングも馴染みやすく、福祉用具の中では定番商品です
類似商品の手すりもたくさんありますが、〝たちあっぷ〟がお馴染みになっているように感じます。福祉用具はネーミングも大切です
そんなお馴染みの〝たちあっぷ〟はどのように誕生し、広まったのでしょうか。気になり、調べてみるとメーカーさんのストーリーがありました(たちあっぷ製造メーカー:矢崎化工株式会社)
たちあっぷを制作する矢崎化工株式会社は、1980年代初頭「イレクターパイプ」を活用した病院・施設内における設備改善の提案活動をしていました
※イレクターパイプとはスチールパイプにプラスチックをコーティングしている軽くて丈夫な素材のパイプです
この頃、作業療法士・理学療法士といったセラピストの方が、ホームセンターでイレクターパイプを購入してきて患者様に合わせたリハビリ訓練用具や自助具を制作していたことを知ります
当時在宅福祉に力を入れ始めた時代でもあったため、矢崎加工の社員の方は将来に向けて患者様の在宅生活のお手伝いができるのではと考え、イレクターパイプを使用した、人にやさしい福祉用具の開発に取り組まれました
「たちあっぷ」は、最初は「パーソナルスタンド」というネーミングで商品化されました
矢崎化工株式会社の職員さんがご自身のお母様が布団から起き上がりや立ち上がるのが大変そうだったのを見て、DIYで作ったのがたちあっぷの始まりだったそうです
「パーソナルスタンド」として商品化したものの、最初はあまり売れず、一時的に販売は中止となりました
しかし、ご利用してくださるご利用者様やセラピストの方と話す中で、布団から立ち上がるだけではなく、玄関や居間、寝室など、手すりを取り付けるのが難しい場所でも活用できることがわかりました
喜んでくれる人がいたため、一部の地域で「たちあっぷ」を特注の福祉用具として販売し続けるとともに、行政にも紹介していった結果、介護保険適用として認められるようになりました
そして、2006年に介護保険の法改正により、介護用ベッドの介護保険レンタル適応が原則要介護2以上となりました
軽度のご利用者様が介護用ベッドを借りにくくなり、普通のベッドや布団から立ち上がるのが難しい状況が増えました
「たちあっぷ」が一気に広まるきっかけとなったそうです
2.たちあっぷの進化
そして、今年〝たちあっぷ〟は進化しました。2023年HCR(国際福祉機器展)にも出展されていました
ここ最近の矢崎化工さんの調査では、お布団で寝る方が少なくなってきており、家具ベッドなどのデザインに馴染みやすいようにモデルチェンジしています
このようなデザインへの配慮も、たちあっぷが誕生した時と同じ熱い思いが込められています
私たちイーライフの福祉用具専門相談員はメーカーさんの熱い思いを引き継いで、ご利用者様に最適な福祉用具をご提案致します
著者
安部 整 福祉用具専門相談員・スペシャリスト育成プロジェクト【COLLEGE+E】責任者・日本車椅子シーティング協会認定シーティングエンジニア1989年 東京都大田区生まれ。 前職から福祉用具営業に従事し、福祉用具の選定には人間工学や医療の知識など、様々な要素が大切と気づき、自己研鑽する。 現場対応に加えて、介護・医療・人間工学・力学なども学び、より適切な福祉用具の選定に根拠と自信を持つ。 現在はそのノウハウや知識を会社全体での育成の仕事を行いながら現場も回る。