サドルの高さ
- 安部 整
私たちE-LIFEの福祉用具専門相談員は、ご利用者様にとって最適な住環境を提供する仕事という考えを最も重視しています
単に福祉用具をお届けするのではなく、ご利用者様の根本的な問題を解決すること
今回は、サドルの高さについてお話します
目次
1:自転車のサドルの高さ
今回は自転車のサドルの高さについてです
自転車屋さんを始めたわけではなく、福祉用具の調整に似ているところがあります
私は普段からシティサイクル(通称:ママチャリ)を使用しています
毎朝ママチャリに子ども2人を乗せて保育園に送るのが毎朝のルーティンです
妻が保育園のお迎いに行くので〝ママチャリ〟は妻と兼用しています
その為、サドルの高さは妻の身長に合わせているので、私にとっては窮屈さを感じながら乗っています
先日、そのママチャリで長距離移動する機会があり、妻の身長に合わせたサドルの高さでは流石にキツいと思い、私の身長の高さに合わせてサドルの高さを上げました。すると、やはり自分の身長の高さに合わせたサドルの高さで自転車をこいでみると、軽快に走ることができました。そう、自転車をこぐことも車いすを下肢駆動(通称:足こぎ)することも同じ原理だと改めて思いました
自転車もシティサイクル・スポーツ車(ロードバイク・クロスバイク)・マウンテンバイクなど自転車の種類や目的によってサドルの高さは変わります
例えばシティサイクルを利用する場合、サドルの高さを高くしてしまうと、信号待ちする際に安定感がなくなってしまいます。スポーツ車は運動効率性を考えた高さにして、スピードや持久性を考慮したサドルの高さにします
自転車も身体や目的に合っていない〝サドルの高さ〟は膝や股関節に負担を掛けるようです
車いすの場合は特に膝や股関節に障害のある方が利用されます。膝や股関節に負担を掛けないことはとても大切です
2:サドルの高さと車いす下肢駆動(通称:足こぎ)の関係性
介護の現場でよくあるのが、車いすの座面を低めにした方が、足に力が入りやすく、足こぎをしやすいのではないかということです
たしかに足に力は入りやすいものの、運動効率性が悪く、膝や股関節、腰の負担が大きくなります
人によって車いすを足こぎしやすい高さというのは変わりますが、基本的には、股関節の角度を110度程度に合わせることが多いです(安定性と運動効率性の中間値)
〝ママチャリ〟と同様に〝信号待ち〟することに似ています
車いすを〝足こぎ〟する際は股関節の角度と膝の角度はとても重要で、座面が低ければ低いほど股関節の角度は鋭角になり、さらに膝の角度も鋭角になります。車いすに座った際に股間節90度・膝90度に調整をすると見た目は綺麗に見えますが、運動効率性としては良くありません
膝や股関節・脊柱の変形を伴う方も多くいらっしゃいますので、「これが一番良い設定です」という正解はありませんが、一人ひとりのお身体と目的に合わせて車いすの座面の高さを設定することが大切です
座面の高さ設定が低すぎてしまうと、どうしても踵を地面に引っ掛けて車いすをこぐようなフォームになります
足を地面に引っかけてこいでいるので、何となく前へ進みますが、下肢に掛かる負担は大きくなりますし、バランスが悪くなってしまいます
〝歩行姿勢により近い足こぎフォーム〟はその後のご利用者様の身体機能に大きく影響します
3:最初のフォームがとても重要
野球で例えるならば、間違ったピッチングフォームでずっと投げていると肩や肘を故障してしまいます・・・
スポーツや自転車、車いすにおいても、最初のフォームがとても重要です
特に車いすの場合は最初の車いすの設定でご利用者様の〝足こぎフォーム〟や姿勢が決まってしまいます
毎日車いすを使い習慣化し、最初に使い慣れた車いすからの変更が難しくなってしまうケースも多いです
ご本人様が〝お尻が痛い〟〝腰が痛い〟という訴えがあって、対応するよりも最初からお身体への負担が少なく、運動効率の良い設定で車いすをご利用いただくことがベストです。場合によっては身体の変形に伴い、修正が困難になり、〝対処〟しかできない場合もありました
理想的な高さや角度は一人ひとり異なる
逆に車いすの座面が高いと、歩行姿勢に近づきますが座っている際に疲れてしまいます
〝車いす〟の〝いす〟の部分への考慮も必要です
ロードバイクやクロスバイクのような〝サドルの高さ〟にはスポーツの要素が含まれています
車いすも一人ひとりの〝身体〟と〝目的〟に適合させていくことを追求し、ご提案することが私たちの仕事です
私たちE-LIFEの福祉用具専門相談員はご提案がご利用者様の〝自立支援〟に繋がることを一番大切にしています
著者
安部 整 福祉用具専門相談員・スペシャリスト育成プロジェクト【COLLEGE+E】責任者・日本車椅子シーティング協会認定シーティングエンジニア1989年 東京都大田区生まれ。 前職から福祉用具営業に従事し、福祉用具の選定には人間工学や医療の知識など、様々な要素が大切と気づき、自己研鑽する。 現場対応に加えて、介護・医療・人間工学・力学なども学び、より適切な福祉用具の選定に根拠と自信を持つ。 現在はそのノウハウや知識を会社全体での育成の仕事を行いながら現場も回る。