トイレ手すり縦か横か

トイレ手すり縦か横か
  • 福祉用具専門相談員・スペシャリスト育成プロジェクト【COLLEGE+E】責任者・日本車椅子シーティング協会認定シーティングエンジニア安部 整安部 整
  • 私たちE-LIFEの福祉用具専門相談員は、ご利用者様にとって最適な住環境を提供する仕事という考えを最も重視しています
    単に福祉用具をお届けするのではなく、ご利用者様の根本的な問題を解決すること
    今回は、トイレ手すりについてです

1.トイレの環境設定

高齢者の方のトイレの環境設定はとても大切です

・トイレで立ち座りする際に掴まるものがなくて大変・・・

・便座が低くて、立ち上がりが大変で困っている・・・などのご相談がよくあります

 

他にもトイレットペーパーホルダーやトイレ内のタオル掛けを頼って不安定な排泄動作をされているケースも多いです

介助者目線でも排泄介助は〝在宅での大変な介護ランキング〟でも上位にランキングしています

排泄が〝自立して安全に行える〟トイレの環境設定はご本人様や介助者の方にとって、とても大切です

 

そこで福祉用具専門相談員としては、ご本人様や介助者の方にとって、安心・安全なトイレの環境設定をご提案させて頂きます。

 

・便座からの立ち上がりが大変なのか・・・

・便座に座ろうとすると、「どすんっ!!」と勢いよく座っていて見ていて危ない・・・

 

このような課題は以前もブログに書かせて頂いた〝人の重心〟という視点と〝人が椅子に座った時の筋力の変化〟に注目すると課題解決ができる可能性が高くなります

 

ご利用者様の個別性への対応はもちろん、あくまで理屈上の話ではありますが、実際に動作して確認していただき、ご本人様・介助者様の〝安心・安全〟に繋がれば良いと思います

2.人が座った時の筋力の変化

ご訪問の際にまず確認するのは便座の〝高さ〟です

最近のトイレは床から便座までの高さが40cm~43cm程度の高さが主流です

平均身長や人間工学に合わせて便座の高さも高くなってきています

(現在の平均身長と1970年の平均身長を比べると世代や性別によって異なりますが、2cmから3cm程度、平均身長が高くなっているデータが確認できます)

その為、以前製造されていたトイレの便座の高さは37cm~39cmのもの多く、そのままご利用されているケースも少なくありません

 

ここでなぜ高さが重要かというと人は座る座面の高さによって背中の筋肉の使いやすさが変わります

『スツール(背もたれのない椅子)に座った際に背中の筋肉が最も活動しやすい高さは〝40cm〟前後であり、それ以上に高さが低くても、高くなっても背中の筋肉の活動性は落ちる』というものです

 

私は何者でもありませんが、これには研究者の方が調査された人間工学のしっかりとしたエビデンスがありました

 

背中(広背筋)は縦手すりを引っ張る力に作用します(背中だけではなく、胸や腕の力も作用しています)

簡単にいうと座面40cm前後のトイレでは縦手すりと相性が良いということです

 

しかし、注意しなくてはいけないのがご利用者様の個別性です

身長も足の長さも違えば、全員が背中の筋力があるかというと、そうではありません

変形性の円背の方は背中の力は使いづらいなど、よくある個別性への対応も必要です

3.結局のところ縦なの?横なの?

結局のところ“個別性”が重要な在宅生活では正解はありません

引張りやすい縦手すりなのか、重心移動を支えやすい横手すりなのか・・・

 

1つ答えがあるとすれば、公共のトイレにはL字手すりが多いように感じます

公共の場で色々な方が使用するトイレには縦にも横にもしっかりとした役目があるということかもしれません

 

イーライフの福祉用具専門相談員は原理をおさえて、個別性に応じたご提案”を心掛けています

著者

安部 整 福祉用具専門相談員・スペシャリスト育成プロジェクト【COLLEGE+E】責任者・日本車椅子シーティング協会認定シーティングエンジニア

1989年 東京都大田区生まれ。 前職から福祉用具営業に従事し、福祉用具の選定には人間工学や医療の知識など、様々な要素が大切と気づき、自己研鑽する。 現場対応に加えて、介護・医療・人間工学・力学なども学び、より適切な福祉用具の選定に根拠と自信を持つ。 現在はそのノウハウや知識を会社全体での育成の仕事を行いながら現場も回る。

福祉用具専門相談員・スペシャリスト育成プロジェクト【COLLEGE+E】責任者・日本車椅子シーティング協会認定シーティングエンジニア安部 整