成果主義の危険な解釈
- 篠本 高基
2023年も終わりに近づいてきている。来年も仕事を楽しもう!熱狂しよう!
目次
今後の日本の企業は成果主義が当たり前?
日本を代表する企業が次々と年功序列を廃止して成果主義を取り入れてきております。
時異なれば事異なり
優れた企業ほど時代の変化とともに企業も変化をさせ逆に今までのやり方に固執している企業は淘汰されていくことでしょう。
それは人材も企業も同じこと。
当社も創業時からは成果主義を積極的に取り入れている企業です。
最近、面接等で成果主義の環境で挑戦したい!という求人者も急増してきているので、ここで改めて当社が成果主義の中でも大切にしている考え方を伝えます。
日本の高度成長期は誰もがエスカレーターに乗っている状態であり、
日本自体が成長を続け企業も儲かり社員も自然に給料もあがり物価も税金も安い状態でした。
しかし今は株価は上がる一方、日本の景気は良くならず、30年前と比べ年収450万
の手取りが約60万も減少している中で、更に追い打ちをかけるように消費税や物価高が急騰しており、国民も苦しくなる状態です。
企業も法人税や消費税が高くなることで苦しくなるので、これでは市中にお金が回らなくなるのは当然であります。
そして追い打ちをかけるように社会保険料も毎年上がっている始末。
社会保険料は社員が半分、会社が半分を負担しているので手取りが減少して社員も痛手だが会社も一蓮托生に痛手になります。
よって企業は社会保障や将来の社員の保証のリスクをさけるため非正社員や派遣社員の雇用を増やしていくようになります。それは経営者の立場からするとある意味仕方ないのです。
企業で上に抜擢される人材はどんなタイプか
話を成果主義に戻しますが、
成果主義が正しいのか年功序列が良いかは正解がない永遠のテーマ。
正解はその会社の方針が正解ということです。
しかし勘違いしてはいけないのが、ORではなく全てを成果主義に舵を切る経営は不可能です。
わかりやすい例が営業職は数字が評価に直結するので成果主義を取り入れやすい一方、
管理職などは数字以外の複合した評価が求められるので成果主義は難しいと言われます。
理由は自身だけの成果を上げることと部下やチームを引っ張り人を動かして成果をあげることは全く異なるからです。使う脳も行動も考え方も別の能力が求められます。
一般的に企業が管理職に抜擢するのは成果よりも人柄や人間性が重視されます。
特に経営者が見る重要な点は会社の方針に理解がありそれを体現でき更に他の社員に良い影響を与える人材です。
企業というところは社長も含めその企業の軸である経営理念の基で働くので優秀でも自社の理念や方針に反発する社員は上には抜擢されません。
また自社の悪口を言いそれで目立とうとか強くなった気分になる痛い人がいますが、そういう人材を会社が上に抜擢することはまずないでしょう。組織を乱すと危惧されるからです。
そもそも本当に強い人は会社を変えるために自分が努力して周りに評価され、上の立場に行って仕組みを変えれば良いだけです。それが正しい会社の変え方なのです。
よって成果を上げたからと言って上に立てるわけではないのですし、自分の成果を上げた=優秀でもないということです。
私の経営観は若い時からこそ社員に責任や権限を与えて成長する環境を提供し、成長速度を高めてほしいと思いますし、とにかく仕事力をあげるのは経験を積むことが最も早い方法と考えます。
ですから20代でも所長や役員に抜擢できる人がいればさせたいしどんどん大きな仕事や立場を経験してもらいたいと思います。
成果主義の間違った解釈①
よく間違って解釈する人がいますが、成果主義だから自分の数字だけ出せば良い!という間違い。
会社という場所は集団で利益をあげる場所でその利益を評価に応じて分配するのが会社です。
年功序列の会社はその利益を原則、学歴・社歴・年齢に応じて分配していく。
分配の方法が違うだけであり集団で利益をあげていくという企業の形は変わらないのです。
たとえば営業が数字だけとることが全て良し、ならば事務の仕事で受発注業務や労務や管理の給料計算から社会保険の手続きも全て自分でやらないといけないはずになります。結局はいろいろな人に支えられているのです。
よって成果主義の会社だから自分の数字以外は関係ない!というのは間違った考え方であるのです。
それが許されるのは個人事業主や2,3人の友達感覚の会社なら良いのではないでしょうか。
私は全体の仕事を見ている立場ですが間違いなく、どんな優秀な人でも一人で出来る仕事の範囲は意外に狭いもの。
それは私も例外ではなく、自分ではできない仕事や不得意な人は得意な人を会社のバスに乗せ目的地まで一緒にいくことが大切なのです。
成果主義の間違った解釈②
また、成果主義だから「自由にやれる」という勘違いも多いですが、そこも異論を唱えます。
その思考の根底には社会と会社を混合してしまっていると思われます。
日本は太平洋戦争で敗戦してアメリカが日本に資本主義を導入して軍事帝国から国民も自由に選択できる資本社会になった。そして社会は自由になった。それは大いに良いこと。
しかし企業は違います。
社員の生活を保証して国に税金を払う。そして会社を成長させて社員の将来まで保証しないといけない
「堤防も蟻の一穴から崩壊する」と説かれるように社員1人の行動で会社が傾くこともあるものです。
よって会社の理念や方針は成果主義であろうと守っていくことが社員には求められるもの。何度も言いますが、それが組織という集団なのです。
組織論から引用するとグレイナーの成長モデルが参考になります。
人の増加により組織の在り方や考え方を変化させていく必要があり、人数の増加に比例して組織は厳しくなっていくのは正しい考え方というもの。
小さい時の組織は楽しくて柔軟で自由です。
しかし会社が成長していくとそれを窮屈とか不自由とか会社が厳しくなった!と捉える人がいますが、それは個人がまだ組織の成長についてこれずミクロな視点でしか物事を見れない人であるのです。
一方ではしっかりした組織であることが安心という人も出てきます。また同じ価値観の優秀な人が組織のレベルにあわせて入ってきてくれるという点も組織の不思議な性質なのだろう。
しっかりした組織であることは一定のレベルの低い人には窮屈で不満かもしれませんが
銀行や得意先やとっては安心できる企業につながり企業価値が高まるということです。
何よりもお客様の立場からすれば厳しい会社と緩い会社では安心と信用が一目瞭然になります。
例えば日本の道路法は世界で一番厳しいと言われています。しかし我々が安心して運転が出来るのは厳密なルールや罰則が統一されているからです。
信号や標識・優先道路などのルールが明確化だからです。
それをしっかり研修をして勉強させてテストも厳しい。罰則も明確なルールがある。
厳しいルール・規律だからこそ安心できる・信頼できるというのはまさにこの通りです。
いくら成果主義が加速するであっても企業はチームで集団で動いていくということを忘れてはいけない。
著者
篠本 高基 【代表取締役社長】1979年 神奈川県横須賀市生まれ。 2016年の創業以来、一貫して代表取締役として牽引 主に経営戦略と15年間での営業経験で構築した手法を社員に徹底した指導を行う。 その他、新規事業を手掛けている。 高校時代は神奈川県の強豪私立高校で甲子園を目指す。ポジションは投手。