E-LIFEのシーティング
- 安部 整
私たちE-LIFEの福祉用具専門相談員は、ご利用者様にとって最適な住環境を提供する仕事という考えを最も重視しています
単に福祉用具をお届けするのではなく、ご利用者様の根本的な問題を解決すること
そのために、私たちはシーティングを学び、観察力を身につけることで、ご利用者様に適合した福祉用具の提案を心がけています
今回は、シーティングエンジニア講習を受講して、現場に生かしたことをお伝えしたいと思います
目次
1:シーティングエンジニア講習
シーティングエンジニア講習はその名の通りシーティングや関連知識についての講義を受け、知見を広めます
シーティングとは、長時間座位を続ける方のお身体や生活状況を考慮し、目的に合わせて良好な座位姿勢が確保できるように車いすを調整することです
福祉用具を活用してご利用者様の自立を支援する、残存機能の維持や向上を目指すというところは、大きく変わりません
シーティングの基本を学んだことで、最も現場につながったことは観察力が鋭くなることです
具体例として一つ、〝呼吸〟で言えば、呼吸しやすい姿勢を知ると、モニタリングのため自宅へ訪問した際に、ご利用者様のこの姿勢は苦しそうだなとか、以前より少し背中が丸まってしまい呼吸の様子や発声の様子が少し変わられたなと感じたりします
また、サービス担当者会議などでご利用者様のご様子を伺っている時も座り直しができていなかったり、立つ時に足が引けていなかったり、身体の前傾ができていなかったり、日常生活に影響する大切な動作に変化が起こっていることに気づくようになります
前回のブログで紹介した、E-LIFEの福祉用具専門相談員の新人教育プログラムの「E-LIFE COLLEGE+J®️」の中においても、新入社員の方には〝ご利用者様の日常生活動作に注目してください〟と伝えています
2:観察力や思考力がご利用者様の問題解決につながる
まず課題に気づくことができなければ、問題解決はできません
講習を受けても、現場でご利用者様に対してどうお役立てるのかが重要なわけです
以前、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のご利用者様のご対応をさせていただいた時のことです
ご利用者様が入所されている施設の職員様よりご連絡があり、
「原因はわからないのだけど、何か車いすの調整がしてほしいようです」ということでした
ご利用者様は舌やのどの筋肉が弱まり、言葉を発することが難しくなっている状況もあり、意思の疎通が難しくなっていました
施設へ訪問をし、車いすに座っている様子をみると以前よりもほんの少しだけ背中が丸くなり、胸が潰れてしまっているように感じました。呼吸が苦しいのかなと感じました
そこで2つの調整を行いました
1.車いすの座面の角度を後傾させた
2.車いすのアームレスト(ひじ置き)にパットをつけ、両腕の位置を安定させる
1に関しては車いすの後座高を2cm低くしただけでした
しかし、ご利用者様にとってはその〝2cm〟がとても大切でした
車いすの座面を後傾させることで、胸が開きました(吸気優位)
さらにアームレストにパットをつけて、腕の位置が安定したことで体幹が安定し、呼吸筋の活動の効率が良くなり、ご利用者様の苦痛を改善することができました
車いすを調整した後にご利用者様が少し〝ニコッと〟してくれたことが今でも忘れられませんし、
ご利用者様のちょっとした変化に気づくことがこの仕事では大切なのではないかと思います
3:〝レボ〟がカッコ良く見える理由
私の趣味になってしまいますが、〝レボ〟という車いすが好きです
スウェーデンの車いすです
車いすの部品を組み換えることで、ご利用者様の身体に合わせてフィッティングができます
〝姿勢〟や〝駆動〟に関してのご利用者様の基本的なニーズはほぼ網羅できます
このレボは、フィッティングの自由度が高い車いすなのです
レボに限りませんが、しっかりとフィッティングされた車いすに乗っているご利用者様はカッコよく見える
車いすの座面の奥行が調整できることはとても重要です
一般的な車いすは、座面の奥行きが38cm〜40cm程度です
高齢者(女性)を対象にした身体寸法の平均は膝の裏からお尻までの長さ(座底長)は39cm程度でした
適切な座面の奥行きは座底長より-5cm~-7cmといわれています
座面の奥行が適切でない車いすの座面に座るとお尻が奥深くまで入りません
結果、骨盤が後傾してしまい姿勢が崩れやすくなります
骨盤が後傾した状態では普段の活動もしにくくなります
車いすをしっかりフィッティングすると、ご利用者様の背筋がピーンと伸びて、表情も明るくなるように感じます
〝レボ〟に乗っている方を病院などで見かけると、しっかりとフィッティングされているために姿がカッコ良く見えてしまうのです
適切なご提案をするために
私たちE-LIFEは、適切なご提案をするために〝シーティング〟の勉強に取り組んでいます
目的はご利用者様の課題を解決するためです
シーティングに関連する知識は、車いすのみでなく、ベッド上のポジショニングや歩行器の選定などにも通じ、他の福祉用具の提案にも通じることが多いのです
医療や力学などが関わるので難しいことも多いのですが、全ては福祉用具専門相談員としてご利用者様へ適切なご提案ができるようになりたい、その想いで取り組んでいます
著者
安部 整 福祉用具専門相談員・スペシャリスト育成プロジェクト【COLLEGE+E】責任者・日本車椅子シーティング協会認定シーティングエンジニア1989年 東京都大田区生まれ。 前職から福祉用具営業に従事し、福祉用具の選定には人間工学や医療の知識など、様々な要素が大切と気づき、自己研鑽する。 現場対応に加えて、介護・医療・人間工学・力学なども学び、より適切な福祉用具の選定に根拠と自信を持つ。 現在はそのノウハウや知識を会社全体での育成の仕事を行いながら現場も回る。